MELC(長岡ゼミ)のブログ

説得力がある参加型追体験『路上の生きモノ』~フィールドワーク展『両想い』~

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ひとつ前のブログで展示方法について書いた、2/9月曜日に行ってきた慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス環境情報学部加藤文俊研究室(以下、加藤研)のフィールドワーク展『両想い』。今回は印象に残った作品について書くことにする。

 

会場の入り口を入って左の壁には”THE加藤研”といった感じの素敵なポスターの展示が目に入る。その壁の延長には太い柱があり、そこをうまく使ったハガキを使った作品の展示がされている。すてき!と思っている最中、その柱にビニール傘がもたれかかっているのを見つけた。よく見ると柱と壁をチェーンが渡っていてそこにもビニール傘がかかっていた。前日の8日は雨だったため加藤研の学生の忘れものだろうか。ちょっと目につくから端っこに寄せたらいいのになあ、、。会場を進むとまたビニール傘を発見した。またここにも、、。

S__5619723.jpg≫木の棚が黄色と黒のトラロープで吊られているところにビニール傘がかかっている。


その傘の横からタブレット端末を持った女性が現れた。この会場にあるビニール傘の謎をわたしに与えた、この展示『路上の生きモノ』の作者である4年生の田中優里さんだ。作品の説明をしてくれることになった。

 

タブレット端末を駆使して写真を見せてくれた。家を正面から撮った普通の写真だ。

 「この写真は東京都葛飾区柴又のあるお家なのですが、この家の扉は少し開いています。Googleストリートビューの写真で遡って調べて見てもなぜか少し開いている。このことを不思議に思ったんです。」へー、たしかに。なんで閉めないのだろう。軋んで噛み合せがよくないのかな。

「柴又の街を実際に歩いてフィールドワークをして視たことから、きっとこの家全体の換気のために開けていることが推測できます。」なるほど。一理あると思う。

「では、なぜこの傘はビニール傘なのか。ビニール傘はどこにでも売っているものではありますが、ビニール傘にこだわる必要もないですよね。」たしかに。わたしは紫色と水色の傘を普段は使っているから、わたしならそれをそのまま使うと思う。ビニール傘にわざわざ揃えようとは思わないな。

 

ここで少し場所を移動する。会場入り口付近の柱の前に着いた。

S__5619726.jpg

「これが再現です。こうやって扉のチェーンのところにひっかけてるんですよね、傘を。扉にもたれるように1本置くだけではダメだったのかという話になります。ちょうど、チェーンにかけている方の上の傘のところから見える家の中には仕切りのようなものがあるように見えます。下に1本置くだけではきっと家の中が見えてしまうのでしょう。2本使うことによって目隠しの役割をしているというわけです。」なるほどー!2本であることに意味があったのか。深い!

「黒い傘でも花柄でもなく、あえてビニール傘を使うことで、ここに住む人は、男性なのか女性なのか、若いのかお勤めをしている世代なのか、おばあちゃんなのかおじいちゃんなのかなど、そういうモノの持つ情報を発信することがないのです。」なるほどなるほど。

「このことから、ここに住む人が自らプライバシーを守っていると考えられます。モノを所有している人が言葉を発しなくても、モノそのものが個人的な情報を発しているということがこのことからわかります。だから生きモノというたとえをしています。自らの生活をよりよくするために誰かが手を加えて命を吹き込んだものを、「生きモノ」と名づけました。 」なるほどーーー!

S__5627908.jpg

≫終始、田中さんが作成したサイト『路上の生きモノ』を見せてくれながら説明をしてくれた。


フィールドワークしたときの写真と、参考にしたGoogleストリートビューの写真をタブレット端末でわかりやすく説明してくれて、再現したという現物を見たことにより、柴又の街を歩いて自分もその場に立ち会ったかのような気持ちになり、情景が浮かんだ。

実際にモノを見せながら、今回は再現という方法で展示を行っていることで、田中さん言語化する前の発見したときの感覚を一緒に味わうことができた。実際に田中さんの体験を追体験したのだ。参加型の作品で斬新に感じ、印象深かった。

会場に入ってパッと見ただけではただの傘だったものが、説明を聞いて、田中さんと話すことで、モノが持つ意味が後ろに透けて見え、わたしにはもう”ただのビニール傘”には見えなくなった。文章以外で追体験をするには、受け身ではいられなくなり作品を体験すべく、参加することになるようだ。驚きや感動など、リアルな感情を会場にいながらにして抱くことができたのは、再現ではあるが実際にその現場に居合わせたからなのだと思う。事実や体験からくる思ったこと、気づき、感想に勝るものはないのではないかと思った。実際に見たもの、聞いたもの、思ったこと、感じたことは、誰がなんと言おうと、誰も否定できない”事実”となることが田中さんの作品を通してわかった。

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カテゴリー: みきてぃ 越境レポート

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