MELC(長岡ゼミ)のブログ

見えない場づくり

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6月11日(水)にNPO法人キッズドアが行ったボランティアに参加しました。キッズドアとは、「すべての子どもが夢や希望を持てる社会の実現に向け、子どもたちに将来への希望を与え、社会に貢献する人材を輩出」するために活動している団体です。活動の中では、小中学生への学習支援や高校生への受験対策講座などを行っているそうです。長岡研のOGである小杉真澄さんが現在キッズドアで働いていて、今回のボランティアについて教えていただきました。

キッズドア1.jpg▲キッズドアのガイドブック

私が参加したボランティアは、中退率の高い高校に大学生が伺い、自分の高校時代の話をするというものでした。話を聞いた高校生たちが、自分の高校生活について改めて考え、高校へ行く意味を見いだしてもらうことがねらいのプログラムです。私たちは、2ヶ月ほど前に入学したばかりの高校1年生に対して、約35人の大学生が1クラス5人ずつに分かれて活動を行いました。

 

参加者は私を含め、基本的に高校生と話をする機会のない大学生。事前に、高校生たちはとても元気があるのでノリはいいけど、話をあまり聞いてくれないかもしれないと言われていたこともあり、どんな反応が返ってくるんだろうと不安でした。そう思いながら、同じクラスに振り分けられた大学生たちと教室へ向かいました。実際に教室の前まで行ってみると、確かに元気がよく、やんちゃそうな子たちでした。授業開始のチャイムが鳴り、机を5グループに分けるように先生が促すのですがなかなか進まず、はじまるのが15分ほど押してしまいました。それから教室に入り、5人で挨拶をした後に、1グループ7人のテーブルに1人ずつ分かれて話しはじめました。このワークでは、高校生たちに、①話を聞くこと ②メモをとること ③質問を考えることの3つを同時に行ってもらうことを目的としていました。つまり、マルチタスクです。そのためのワークシートも用意されていて、大学生はそれにそって話をしました。

2014-06-16 10.19.13.jpg▲高校生にくなられたワークシート

大学生が話した内容をメモしやすいようになっています

私が話したのは、高校3年の文化祭にクラスで出たときのこと、ダンス部だったときのこと、塾に行っていたことなどです。高校生たちは、話の中で興味のある話はとてもしっかりと聞くのですが、あまり興味のない話になると集中力をなくしてしまう子もいました。普段ゼミのプレゼンなどで話すとき、話を聞いてくれる側は個人個人が、おそらくほぼ無意識的に聞く姿勢になれています。そして、聞く姿勢になれている個人が集まることで、話をする側にとっても、話を聞く側にとってもいい場がデザインされています。そのときは、“お互いにデザインし合っている”という印象を受けます。また、聞くという姿勢だけでなく、メモをとったり、同時に考えたりする行為を主体的にしています。ですが、今回高校生に話をしたとき、個人個人の聞く姿勢にはバラつきがあったり、聞く姿勢になれていない子がいたりしました。まして、メモをとったり、質問を考えたりという行為を主体的に行うのは難しい。そこで、ワークシートを使って聞く姿勢やそのほかの行為を“こちらがデザインする”必要があるようでした。

 

そして、高校時代の話や質問などを含め1グループ15分ほどを3ラウンド行い、1時間目が終了しました。その後、休憩をはさんで2時間目は、私たちの話を参考にこれからの高校生活での目標を1人10個紙に書き、それをグループで共有しながら話し合いました。高校生たちにとって10個もの目標を立てるのはかなりのハードワークかなと思いましたが、多少は苦戦しながらも、みんな時間内に10個書き終わっていました。その目標の中には「遅刻をしない」「ちゃんと勉強をする」といった基本的なものもありましたが、将来の夢につながるものなどもあり、深く考えられているようでした。ですが、難関はその後のグループワークです。私たち大学生はグループごとのファシリテーションを任されていました。ディスカッションやダイアローグに慣れていない高校生は、恥ずかしさもあって声が小さく早口になっていたり、みんなで話さず仲のいい子とだけ話したりしていました。また、1つのグループにはおとなしい子や元気な子などさまざまなタイプの子がいました。その中でファシリテーションをするとき、おとなしい子に合わせてしまうと元気な子がふざけてしまい、元気な子に合わせてしまうとおとなしい子が退屈になってしまう。そのバランスをとるのがとても難しく感じました。普段、自分が大学生などとグループワークをするときは「聞く姿勢」と同様、いいグループワークにするために個人個人が場をデザインしようとしています。ですが、高校生たちは自分たちが場をデザインするということに慣れていないため、ファシリテーションだけがデザインしようとしているようでした。

 グループワークやワークショップなどをするとき、「場づくり」はとても大切な要素です。机やいすを動かしたり、お菓子や装飾で部屋を彩ったりすることでいい場をつくる。そうしたハードによる場づくりについては普段から考えていました。ですが、今回はハードではなくソフト、つまり個人の意識によっていい場をつくることの重要性を考えさせられました。見える場づくりだけでなく、見えない場づくりです。普段は強く意識せずに行っていましたが、よりいい場をつくるにはそれを意識することが重要だと感じました。今回のボランティアは私にとって、普段のグループワークを見つめ直すいいきっかけになりました。

 

また、このボランティアを通し、高校生たちと触れ合って感じたのは、実は将来のビジョンがしっかりしている子が多いということでした。私が伺った高校は中退率が多いものの、一方で、専門学校への進学率も多いそうです。実際に生徒の中には、教師になりたい子や音楽関係の道へ進みたい子、看護師になりたい子など大学よりも先の将来について考えられている子がいました。大学ではなく、専門学校という選択をする子の中には学力面によって大学という選択肢を自ら削っている子もいるかもしれません。ですが、進学校と言われる高校の学生たちは、大学へ行くことがあたりまえとなって、他の選択肢があるということすら考えていない子もいると思います。また、目の前の将来だけを見て、その先についてまで考えきれていない子もいると思います。実際、私が話した高校生たちは、グループで何かをするということはまだ苦手で、個人の想いを表に出すことも苦手かもしれません。ですが、自分について考えることや目標をもつことはできているのではないかなと感じました。今回大学生と話したことで、高校生たちが次のステップにいくきっかけになればなと思います。

 

カテゴリー: Sarah 越境レポート

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