MELC(長岡ゼミ)のブログ

内向きの衝動を形にする

| コメント()

「あなたがクリエイティブと言っているものは、ビジネスですか。アートですか。マスターベーションですか。」

これはRMC(リクルートメディアコミュニケーションズ、現在はリクルートコミュニケーションズ)の紫垣 樹郎さん(現在はインサイトコミュニケーションズ代表取締役)の作成されたキャッチコピーである。このキャッチコピー自体が何に対して当てられ、どういう反響を呼んだのかは全く以て知らないが、今日は度々この言葉を思い浮かべる機会があった。

■内向きのアートはつまらない

いま、慶応義塾大学の学生である三原 慧悟監督が『バクレツ!みはら帝国の逆襲‐世界開放宣言‐』というタイトルの自主映画を完成させ上映会を開催している。彼の率いる映画制作集団であるBMT(爆裂・三原・帝国の略らしい)の帝国民に誘われ、6/22に蒲田駅近くにあるアプリコの小ホールにて開催されていた上映会にお邪魔させていただいた。映画のパンフレットにはこんな言葉が記載されていた。

「世界は言葉にあふれている。大衆を扇動する無責任な言葉は時として人を傷つけ、苦しめた。ここにもまた、そんな”言葉”に抑圧されていた人々がいた。ある者は他人に意見を押し付けられ、ある者は恐怖心から虚言癖に陥り、またある者は社会的教育により自分の意見を封じ込められてしまった。そんな者達が、ある日をキッカケに自分の言葉を手に入れた。そして抑圧から開放されるべく逆襲に乗りだすのだ… ダア、ダアダアダダダダ…」

正直この文章を読んだ時は所謂内向きのアート(映画)なのかな、自分の表現したいことを自分の表現したい世界に向けて自分の欲求不満の解消のために作られたアート(映画)なのかなと思ってしまった。紫垣さんのキャッチコピーの言葉を借りるなら「マスターベーションのための自主映画」なのではないかなと思ってしまった。簡単に言うならば誰かに伝えようとしていない内向きのアートなんてつまらないと考えてしまった。映画自体の内容はネタばらしになってしまうので控えるが、このような自己衝動を痛いくらいにぶつけようとしてくる映画だがとても、本当にとても面白かった。何故自己衝動をぶつけてくる映画が面白いのか、そんな内向きの伝え方では自室で一人で楽しむべきレベルにしかならないのではないかという疑問が「面白かった」のあとに感想として湧き出てきた。

■内向きのアートはおもしろい

この疑問に対し、映画の上映会のあとのアフタートークショーの場で少し答えに結びつきそうな会話が繰り広げられた。アフタートークショーでは三原 慧悟監督と、フジテレビでドラマのプロデューサーをやられている村瀬 健さん(以前所属の日本テレビでは14歳の母、フジテレビではBOSSなどの有名プロデューサー)の2人で行われた。

「今現在、まるでプロっぽいものは誰でも簡単に作り出すことが出来る。だったら良い物を作るためには何が必要なのか。テクニックではなく、何を伝えたいか」by村瀬さん

「溜め込んでいた初期衝動(人とのコミュニケーションに欠点がある自分、簡単に知らない人を否定できてしまう周りの人への否定的な葛藤)を何とかしたかった」by三原監督

「俺が俺のために感じたことを描いても良かった。でも誰かにこの衝動を伝えたかった、だから楽しませる工夫をした」by三原監督

この3つの言葉が自分の「内向きの誰に対するものでもない自己衝動のアート」が何故「おもしろい」のかの答えとして、別に内向きの、衝動解消のための自主映画だとしても、そこに自分の行動が「誰にどう映るのだろうか」「誰かを変えられるのではないか」「環境を変えられるのではないか」という意識さえあれば、人の共感を呼べるのではないかと思えた。この意識を持つということは一見すると誰かのために作る、伝えるという外向きの行動と同じように見えるが、あくまで自分の衝動のためという軸があることにより何かを作り出し伝える上で外向きのみよりも大きな原動力になるだろうし、外向きよりも継続性のあるモチベーションが維持できるのではないだろうかとも更に気付くことが出来た。もっと言えば内向きだからこその生まれる力によって、アートはおもしろくなると僕は思う。

■クリエイティブと言っているものは

始めのキャッチコピーの話に戻るが、僕がこのキャッチコピーを始めてみた時には最後の「マスターベーションですか。」の部分に、そんな内向きの衝動をクリエイティブと呼べるのかという否定のニュアンスがあるのではと感じた。しかし内向きの衝動の価値を感じてからは、ここの部分からもおもしろいクリエイティブなモノは生まれる、むしろ他の「ビジネスですか。」「アートですか。」と同じくらい重要なのではないかと解釈が変わってきた。誰かのためではなく自分のため、その行動の中に他人にどう映るのか、どう影響するのかの視点がある。この状態こそ自分の目指すべき姿勢なのではないかと感じる経験ができた。

 

BMTホームページ http://miharateikoku.com/

 

 

カテゴリー: 元カノ

コメント

What's New

twitter