4月29日に吉祥寺の井の頭公園で行われた『視覚障害者と一緒に楽しむ写真教室』に参加してきました。《主催:日本視覚障碍者芸術文化協会》イベントの大体の流れは、視覚障害者も一般の方と一緒に公園を回って写真を撮ります。視覚障害者は介助者のガイドで写真撮影をします。健常者の方はアイマスクを着用し、杖を持って仮想視覚障害者を体験してもらいながら写真撮影や食事をしてもらいます。最後に参加者たちが撮った写真のから3枚を選び現像して、講評会を行ないます。また、視覚障害者用に触ることの出来る凹凸の立体写真を手で触って触覚で写真を楽しむことができます。
実は今回の参加は2回目で、初回は視覚障害者の体験をしたので、今回は視覚障害者のガイド役として長野からきたミキさんとペアを組みました。初めて写真教室に参加する方です。前回の体験でガイド役に必要なことは如何に客観的に物事を伝えられるかという事を学びました。それは何故かというとガイドさんは視覚障害者の目になって見たもの全てを伝える役なので自分の感情や主観的に物事を相手に言うと、本当にその人が撮りたい風景や撮りたい瞬間などが分からなくなります。たとえば「今とてもきれいに映っているのでシャッターチャンスですよ!」などと言ってはいけないのです。実際カメラの向こうに何が映っているか、風景はどのような割合でフレームに収まったかを本人に伝えて決めてもらいます。あくまで私はその人の代わりに風景を見ていることを意識してガイドをしなければなりません。
写真を撮る前に近くに触れるものであればなるべく手で触らせて距離感や立体感やサイズを掴んでもらうようにしました。また主催者の尾崎さんに言われたのは、色を意識的につたえたら視覚障害者の方もよりよく風景が分かります。中途失明の人はもちろん、色彩には私たちと同じイメージを持っている。その後、ミキさんと一緒に公園を回って、「綺麗な牡丹を見つけました。」と伝えると「撮りたい!」とミキさんが言い、早速花に触わってから写真を撮りました。実はミキさんは3歳まで少し見えたので、何となく色の違いが分かります。でも、同じ色の細かい分別ができないのです。ピンクって言ってもピンクは沢山ありすぎてどう表現していいか困りました。「濃いピンクから薄いピンクにグラデーションになっています。」と言いましたが、ミキさんには伝わりませんでした。色の形容詞を使ってもわからないので、「優しいピンク」と人の感情の形容詞で色を表現するとやっとわかってもらえました。
実は障害者の状況により、色の捉え方が違っています。普段私たちは同じものを見たことがあれば、そのものの名前だけ言えばイメージ湧きますが、視覚障害者たち、特に先天性の方は全く共通の認識がないため、伝える時にお互いの共通の認識のあるものを探しました。ピンクに白を少し混ぜた感じといっても伝わらなかった花の色ですが、優しいピンク色で頷いてもらえました。その表現は人間の感情であり、主観的な言葉であるけれど、彼女なりの色が見えたのだと思いました。彼女の頭の中で優しいピンクがどう映っているのかはわかりません。そもそも先天性の失明の人は盲学校で、「ポストの赤」や「リンゴの赤」で大まかな色の認識を勉強するそうです。まして原色以外の色や、そもそも「赤」も彼らの想像に任せています。
色をものに例えて客観的にミキさんに伝えたところで、私たちには共通な基準がないと気付きました。私とミキさんの同じ基準である感情の形容詞を使って私の感性で伝えましたが、シャッターを押すか押さないかはミキさんが決めるものです。公園を回る間にずっと私の説明を聞いてきたミキさんは私の話し方、伝え方、写真撮影での会話で私の性格や感性をわかってもらえたようでした。私が思う優しいとミキさんが思う優しいという形容詞の意味が同じだと捉えたからこの牡丹を撮る事に決めたのではないかと思いました。
関連リンク:視覚障害者と一緒に楽しむ写真
コメント